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2024.09.28Research

桑原招聘研究員らの原著論文が Paleoceanography and Paleoclimatology 誌に掲載されました

桑原招聘研究員が筆頭著者を務め,中村招聘研究員加藤所長らが執筆に携わった論文が Paleoceanography and Paleoclimatology 誌に掲載されました.


本論文では,今から約5,700万年から4,000万年前の古第三紀前期を研究対象としました.この時代は,地球の気候が現在よりもはるかに温暖であり,急激な温暖化イベント(Hyperthermals)が多数発生したことで知られています.私たちは,インド洋東部 (ODP Hole 762C) で掘削された海底堆積物の炭素・酸素同位体比,および化学組成を分析し,古第三紀の温暖化イベントの中でも最大規模である暁新世‐始新世境界温暖化極大(Paleocene–Eocene Thermal Maximum, PETM)をはじめとする6つの温暖化イベントの記録を特定しました.そして,堆積物の化学組成データに独立成分分析という多変量統計解析手法を適用することで,堆積物の地球化学的特徴(陸源物質や生物起源物質の寄与,堆積後の化学プロセスの痕跡など)を抽出しました.その結果,温暖化に伴い,大陸からの陸源物質の供給や,魚などの海洋生態系の高次消費者が繁茂したこと,さらに,温暖化の発生時に海底付近ではやや酸素に乏しい環境が出現したことが明らかになりました.本研究は,過去の温暖化イベントとその当時の海洋環境の解読を通じ,温暖化が海洋生態系や海洋環境にどのような影響を与えたかを理解するうえで貴重な知見を提供します.


論文は以下のリンクからご覧いただけます.

http://dx.doi.org/10.1029/2023PA004829